クレーンの吊り上げ荷重とは、そのクレーンで吊り上げができる「最大の荷重」を表しています。
吊り上げ荷重は、小型のクレーンを装備したユニック車や、大型クレーン車によって異なるため、目的に合わせて選ぶ必要があります。

ここでは、クレーンの吊り上げ荷重に加え、混合しやすい「定格荷重」「定格総荷重」についても解説します。
またどんな時に、吊り上げ荷重が変わるのか紹介していますので、クレーンについて理解を深めていきましょう。

クレーンの吊り上げ荷重とは

そのクレーンで吊り上げができる「最大の荷重」を表している、クレーンの吊り上げ荷重。
注意点としては、吊り上げ荷重には、フック・グラブバケットなどの吊具の質量も含まれた数値である点です。たとえば吊り上げ荷重が3tと記載されている場合は、吊具も含めて3tまで持ち上げられるということになります。
なお、吊り上げ荷重を出すには、下記のものがあり、そのクレーンが最も重い物を吊れる状態になっていることが条件です。車体の用語については後述します。

• アウトリガーを最大に張り出す
• ブームの長さを短く縮小する
• ブームの傾斜角を最大にする（作業半径を最小にする）

荷台に小型のクレーンを装備した、ユニック車の吊り上げ荷重については、過去の記事「ユニック車の吊り上げ荷重ってどのくらい？」にて解説しています。

クレーンの吊り上げ荷重で知っておきたい用語

クレーンの吊り上げ荷重に関わる用語について理解を深めておきましょう。

ブーム

ブームとは、クレーンの竿部分のことを指します。正式名称はジブといいますが、現場では「ブーム」と呼ばれることが多くなります。
ブームは、長さと角度が調節できるのが特徴で、3段ブーム・4段ブームとさまざまなタイプがあります。 ブームの形状には、上記写真のように、箱型構造のものや、ラチス構造のものがあります。

アウトリガー

アウトリガーとは、車体の両サイドに脚のように張り出した装置で、重量物を吊り上げた際に、トラックのバランスが崩れて横転するのを防ぐ役割があります。そして現場の傾斜角度に合わせて、車体が固定できるので、安定して作業を行うために欠かせません。
その他に、車輪を支えるサスペンションのゆがみを防ぐなど、安全に作業するためになくてはならない装置です。

作業半径

作業半径とは、クレーンの旋回中心からフックまでの水平距離をいいます。ブームの長さを短くして、傾斜角を最大にして、作業半径を狭くしたときに、最も吊り上げることができます。

定格荷重・定格総荷重との違いは

吊り上げ荷重と似た言葉に、「定格荷重」「定格総荷重」という言葉があります。混合しないようにそれぞれの違いについて知っておくとよいでしょう。

定格荷重

定格荷重とは、フックなどの吊具の質量を差し引いて、吊り上げできる荷重のこと。ブームの傾斜角や、長さによって決まります。ただし、作業内容によってフックなどの吊具を付け替えることがあり、その時々で定格荷重が異なってしまうため、注意が必要です。
作業を行う際には、「空車時定格総荷重（トラックに積荷がない状態で、作業半径に応じた吊り上げ性能を表す荷重）」に基づいて作業することが大切になります。

定格総荷重

定格総荷重とは、フック等の吊具の質量を含んで、吊り上げできる荷重のことをいいます。
定格荷重の場合、ブームの長さや、作業半径が同じであっても、吊具を付け替えると数値が変わるため、あらかじめ吊具を加えた、定格総荷重で表示されていることが一般的です。
定格総荷重は、アウトリガーの張り出しに対する作業半径や、ブームの長さによって数値が変わります。そして定格総荷重の最大値が吊り上げ荷重となります。

吊り上げ荷重を考慮すべき場面は？

クレーンの吊り上げ荷重では、ブームの長さや作業半径によって、その数値は異なります。
その他には、アウトリガー設置面の状況によって、調整が必要になることもあります。たとえばぬかるみのある場所であれば、設置面が不安定になるため、吊り上げ荷重を減らす必要があるでしょう。

そして移動式クレーンで作業を行う場合、吊り上げ荷重の他にも、注意しておきたいポイントがあります。

• 吊り上げる重量物の質量はいくらか
• 地上何メートルの高さまで吊り上げるのか
• 移動式クレーンの設置位置から作業半径は何メートルか
• 安全に作業するために適したブームの長さや傾斜角はどれくらいか

など、現場の状況をふまえつつ、よく検討しておくことが大切です。

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