物流はなぜ人手不足?人が足りない原因と5つの対策方法 | 関根エンタープライズグループ
2023.02.22
「宅配個数が増えて、トラックドライバーの数が足りていない……」
「体への負担が大きいため、倉庫スタッフがすぐに辞めてしまう……」
「人手不足によって、人為的なミスや事故が多発している……」
といった人手不足に関する悩みは、大小問わず多くの物流現場で発生しています。特にここ数年で、こうした人手不足による問題や課題が急速に浮上してきたという現場も少なくないでしょう。
本記事では、なぜ物流で人手不足が発生しているのか、その原因と対策方法についてご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
物流はなぜ人手不足?考えられる原因とは
物流は常に人手不足だと言われていますが、その背景では一体何が起こっているのでしょうか。
考えられる原因について、政府の統計などを参考に紐解いていきましょう。
原因①:個人宅向け配送の増加
物流が人手不足に陥っている原因の1つ目が、個人宅向け配送の増加です。
総務省の「 情報通信白書令和3年版」によると、ネットショッピング利用世帯(二人以上)は2020年1月時点で42.8%であったのに対して、2021年3月時点では52.5%へと伸びています。つまり、日本に住む半分の世帯がネットショッピングを利用しているという結果です。
実際、国土交通省が2021年1月に発表した「 最近の物流政策について」では、宅配便の取り扱い件数は2015年から2019年の5年間で約7.1億個(+19.6%)も増加したと報告されています。
このような個人宅向け配送が増加傾向にある要因は大きく2つあり、1つは新型コロナウイルス感染症拡大に伴って人との接触機会を避けるようになったという点、もう1つはEC(電子商取引)市場の規模が年々拡大しているという点です。
コロナ禍における宅配需要の増加は、第3次産業(小売業、物流・運輸業、宿泊・飲食サービスなど)の活動を指数化した経済産業省のデータ「第3次産業(サービス産業)活動指数」を見ると明らかです。
第1回緊急事態宣言の発令があった2020年の小売業全体の活動指数は97.5と前年比で3.8%低下する中、通信販売小売業(ネットショップ)は前年比2.1%と上昇。2021年以降も上昇傾向は続き、前年比を上回っている状況となっています。
また、EC(電子商取引)市場の拡大に関しては、スマートフォンやSNSの普及に伴って、実店舗とインターネットの垣根を取り払って顧客を獲得するマーケティング手法を導入する企業が増えていることも背景としてあります。
この流れに沿うように、2018年頃からSNSアプリで直接商品が購入できる機能が日本国内で次々と利用開始になり、EC需要を増加させる一翼となりました。
何でもインターネットで購入・注文ができるようになった今、個人宅向け配送の需要は低下することなく、今後も伸び続けていくと予測できるでしょう。
原因②:就労希望者の減少
物流が人手不足に陥っている原因の2つ目が、就労希望者の減少です。
国土交通省の「 物流施設における労働力調査」によると、生産人口年齢(15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる人口層)は、2005年〜2055年までの間で8,400万人から4,600万人と半数近く減少する見込みと報告されています。
物流業界への就労希望者が伸び悩む原因は、物流に次のようなイメージがあるのも、一つの要因だと言われています。
- 給与が低い
- 拘束時間が長い
- 残業が多い
- 休みがない
- 女性が活躍できない
実際、上記の悩みから物流業界を辞める方・就労を諦める方も少なくありません。
このような物流の課題を解決すべく、時間外労働の上限規制を含む働き方改革関連法が2024年度から適用されます。
- 時間外労働の上限規制(年間960時間まで)
- 月60時間を超過する労働に対する割増賃金の引き上げ
- 有給休暇取得の義務化
- 同一労働同一賃金の実現
- フレックスタイム制の拡充…など
この働き方改革関連法の適用によって、従業員の健康維持が促進されるだけでなく、物流業界にあるマイナスなイメージの払拭も期待されています。
しかし一方で、働き方改革関連法が適用されると労働時間が削減されますので、就労者が増えない限り、さらなる人手不足に陥る可能性も否めません。
このような、働き方改革関連法の適用に伴う人手不足や、人手不足による物流停滞、売上減少、収入減少といった問題は「物流の2024年問題」と呼ばれています。
原因③:「ムリ・ムダ・ムラ」が多い
物流が人手不足に陥っている原因の3つ目が、「ムリ・ムダ・ムラ」が多いことです。
物流には、
- 手待ち・荷待ち・付帯作業待ちなどの待ち時間が多い
- 荷役が手作業で時間がかかる
- 運転計画が非効率
- 各イベントまでのリードタイムがタイト
といった「ムダ・ムリ・ムラ」が多く潜んでいます。
物流におけるムダ・ムリ・ムラは「3ム」や「3M」と呼ばれ、これらが発生している時は、実際の作業量と能力のバランスが維持できていない可能性があります。このようなムダ・ムリ・ムラが多い現場では従業員の能力頼みになっている傾向が多いため、ノウハウの継承や業務の平準化ができていなかったり、人が育ちにくい・離職が増えやすいといった問題が発生しがちです。また、人為的ミスや事故が発生しやすくなります。
例えば、「配送個数は増える一方なのに、人を雇う予算が取れない……」「人材が育つ前に離職してしまうし、そもそも人が集まらない……」といった人手不足の課題に直面している方は、こうしたムダ・ムリ・ムラを解消する工夫を凝らしていく必要があるでしょう。
物流の人手不足を解消する5つの対策
物流の人手不足を解消するためには、具体的にどのような対策を取るべきでしょうか。
人手不足を解消するのに有効な対策を、5つにまとめてご紹介します。
対策①:物流ロボットを活用する
物流ロボットとは、ピッキングや仕分け、荷役、搬送といった単純作業を自動で行ってくれるロボットです。
物流ロボットには、決められたルートを走る無人搬送ロボット(AGV)と、周囲の情報を自動検知して走る自律走行ロボット(AMR)の2種類があります。
物流ロボットを導入することで、人にしかできない業務に従業員を割り当てられる他、従業員の負担軽減や人為的ミスの防止なども期待できます。
また、作業スピードが向上するため、生産性もアップするでしょう。
対策②:物流システムを活用する
物流システムとは、物流が持つ機能を効率化・最適化する目的で作られた管理システムです。
【物流システムの例】
- 配送管理システム:荷主別・乗務員別・傭車別などで配送状況を可視化
- 運行管理システム:急発進・急ブレーキ・急加速・アイドリングストップなどを可視化
- 在庫管理システム:在庫の過不足や入出庫情報を管理
- 貨物追跡システム:貨物の位置や状況を管理
- EDIシステム:取引状況を企業間で共有
これらの物流システムを導入することで、人員配置に関するムダ・ムリ・ムラを改善でき、引いてはコストカットや作業ミスの予防にもつながっていきます。
また、ノウハウの共有や技術の平準化にも役立つため、人材育成を目的としてこれらの物流システムを導入する企業も少なくありません。
さらに、物流システムによって稼働状況が可視化されるため、従業員の健康や安全管理にも貢献します。
対策③:労働環境を改善する
2024年に適用される働き方改革関連法に向けて、労働環境の改善が全ての事業者に求められます。また、就労希望者を増やしていくためには、物流業界全体で働きやすい労働環境を実現する必要があるでしょう。
労働環境改善の具体例としては、基本給の改定や福利厚生の見直し、置き配への積極的な取り組み、フレックスタイム制度や時短勤務制度の導入、各種休業が取得しやすい環境作りなどがあげられます。
なお、厚生労働省・国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会からなる「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」から、労働環境改善についてイラスト付きでわかりやすく説明されているガイドライン「取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」が配布されていますので、ぜひご一読ください。
対策④:求人方法や募集する人材の幅を広げる
「求人募集を出しても、なかなか人が集まらない」「求人募集のノウハウを持っていない」とお悩みの方は、求人方法や募集人材の幅を広げてみましょう。
一昔前までは、求人情報誌やタウン誌、新聞の折り込みチラシといった紙媒体を使って求人募集することが一般的でしたが、現在はインターネットで情報収集するのが当たり前になっています。
そのため、求人サイトを利用したり、Webサイトやブログで企業をアピールしたりと、求人募集の方法を時代に合わせていかなければなりません。
また、「物流=男性社会」というイメージがある方は多いかと思いますが、国土交通省の「運輸業の労働者をめぐる状況」によると、営業用トラックドライバーの女性比率は増加傾向にあり、物流への就労を希望する女性は少なくありません。
このようなトラック運送業界で働きたいという女性を支援するため、「トラガール促進プロジェクト|国土交通省」という取り組みも進められています。
ただ実際のところ、全産業での女性労働者比率が40〜41%で推移する中、運輸業は15〜17%での推移と、まだまだ低い状態です。
女性を雇用対象にすることで、女性が働きやすい労働環境の整備など新たな課題が増えますが、人材不足の解消や女性の雇用機会創出に貢献するでしょう。
対策⑤:物流アウトソーシングを活用する
物流アウトソーシングとは、物流業務を外部の業者に委託することです。
物流アウトソーシングには、あらかじめ利用期間や料金が決まっている定額制の物流アウトソーシングと、「一時保管を依頼したい」「単発で大量に荷物を運びたい」といった、必要な時だけ依頼できる物流アウトソーシングの2種類が存在します。
物流アウトソーシングを使うメリットは、自社で人材を確保することなく人手不足が解消できる点、業務に必要なコストが削減できる点、専門的な知識や技術を要する依頼も受注できるようになる点があげられます。
そのため、「宅配個数や受注依頼は増えているのに、人を雇い入れる余裕がない」「流通加工や管理の受注数を増やしたいのに、場所が足りない」といった悩みが解決できるでしょう。
物流アウトソーシングについては「物流アウトソーシングとは?メリット・デメリット・業者の選び方を解説」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
物流の人手不足は早急に解決すべき課題
今回は、物流業界で人手不足が発生する原因と、その対策方法についてご紹介しました。
人手不足が解消されないままだと、今後さらに従業員への負担が増加する一途を辿ることになります。
今回ご紹介した対策方法を活用して、バランスの取れた物流を目指していきましょう。
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