クロスドッキングとは?物流センターの仕組みやメリット・デメリット | 関根エンタープライズグループ
2023.07.26
「今日ネットで頼んだら、明日までに自宅へ届く」という物流が当たり前になりつつある昨今、クロスドッキングという物流方式が注目を集めています。
そこで今回は、クロスドッキングの基礎知識や仕組みについてご紹介します。また、トランスファーセンター(TC)との違いや、コスト的なメリット・デメリットについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
クロスドッキングとは
クロスドッキングとは、商品を入荷後、物流倉庫に保管することなく、すぐに出荷する拠点及び拠点機能のことをいいます。棚での保管を介さずに、荷受場(ドック)から出荷場(ドック)へと、荷物が交差(クロス)するように流れていくことから、この名が付けられました。
そのため、保管機能を有する物流センターで実施しているような、荷物や貨物の開梱、流通加工、梱包、在庫管理といった作業は基本的に行われません。つまり、倉庫に入荷した状態のまま出荷することになります。
クロスドッキングの仕組みと特徴
物流拠点となる物流センターでは、「入荷→仕分け→保管→ピッキング→流通加工→検品→梱包→出荷仕分け→出荷」という工程を経て商品が配送されていきますが、クロスドッキングでは、「入荷→検品→仕分け→出荷」と、工程数が非常に少ないのが特徴です。
工程数が少ない分、保管機能がある物流倉庫や物流センターと比べてスピーディな出荷作業が可能となっており、生鮮食品やトレンド商品のような足が早い商品を扱うのに適しています。
また、在庫の保管スペースを確保する必要がないため、規模の小さな物流倉庫でも採用されています。
物流機能については「【物流とは何か?】物流の目的や機能・ロジスティクとの違いについて」をご覧ください。
クロスドッキングの重要なポイント
クロスドッキングで重要なポイントは、荷受場と出荷場の連携です。
商品の保管を行う物流倉庫や物流センターと違って、入荷から出荷までのリードタイムが短いクロスドッキングでは、入荷後にすぐ仕分けをして出荷準備に入らなくてはなりません。
そのため、商品の状況と、システム上のデータがリアルタイムで反映していることが求められます。
クロスドッキングと物流センター
クロスドッキングは、エリア内の配送拠点であるトランスファーセンター(TC/通過型物流センター)に適した拠点機能であり、「クロスドッキング=トランスファーセンター」として認識されていることが多い傾向です。物流企業によっては、トランスファーセンターをクロスドッキングやクロスドッキングトランスファーセンターと呼ぶところもあります。
しかし、厳密に言うと両者はイコールで結びつくわけではなく、あくまでクロスドッキングとは拠点機能を指し、ディストリビューションセンター(DC/在庫保管型物流センター)などのその他の物流センターで併用されているケースがあります。
例えば、スーパーのような「常温食品・冷蔵食品・生鮮食品・冷凍食品」を扱う業者では、賞味・消費期限が長めの常温食品と冷凍食品は倉庫内の棚や冷凍庫でストックしますが、賞味・消費期限が短い冷蔵食品と生鮮食品は在庫保管を行わずクロスドックさせるケースが大半です。
このような、保管機能や在庫管理機能を持つ物流センターはディストリビューションセンターに該当しますが、一部の商品に関してはクロスドッキングで入出荷を行っていることになります。
つまり、クロスドッキングを導入するのであれば、トランスファーセンターにしなければならないというわけではなく、取り扱っている商品に応じて拠点機能を使い分けながら、適切に流通させていく必要があると言えるでしょう。
クロスドッキングのコストメリット
クロスドッキングの導入や活用を検討する上で気になるのが、コスト面についてです。そこで、クロスドッキングのコストメリットを5つにまとめましたので、それぞれ詳しく解説していきます。
【クロスドッキングのコストメリット】
①:人件費が削減できる
②:ファシリティコスト(スペースコスト)が削減できる
③:生産性アップが期待できる
④:在庫ロスが回避できる
⑤:顧客との信頼関係アップに繋がる
コストメリット①:人件費が削減できる
クロスドッキングのコストメリット1つ目が、「人件費の削減」です。
保管機能を持つ物流倉庫や物流センターでは、商品のピッキングや流通加工といったさまざまな作業が必要ですが、クロスドッキングではこれらの作業を行いませんので、その分、人件費を大幅に削減することができます。
コストメリット②:ファシリティコスト(スペースコスト)が削減できる
クロスドッキングのコストメリット2つ目が、「ファシリティコストの削減」です。
在庫を多く抱えると、その分保管するスペースを確保する必要がありますが、クロスドッキングで必要なスペースは、入荷(検品)、仕分け(荷捌き)、出荷を行うスペースのみ。そのため、物流倉庫の賃料や維持費、保管料、運用費、管理費などのファシリティーコストを削減することができます。
コストメリット③:生産性アップが期待できる
クロスドッキングのコストメリット3つ目が、「生産性の向上」です。
クロスドッキングは、入荷したそのままの状態で出荷を行うため、大幅にリードタイムが短縮できます。リードタイムが短縮すると作業効率と出荷速度が上がるのはもちろん、不要な作業の削減や、作業ミスなどの人為的ミスも最小限に抑えられ、生産性アップが期待できるでしょう。
コストメリット④:在庫ロスが回避できる
クロスドッキングのコストメリット4つ目が、「在庫ロスの回避」です。
在庫ロスとは、入荷したのに売れる機会を逃したり、在庫を処分するためにやむを得ず値引きや廃棄したりと、本来なら得られたはずの利益を損失してしまう事象を指します。
保管機能を持たないクロスドッキングは、在庫を大量に持てませんので、売れる分だけ商品を入荷するのが基本です。そのため、商品を販売する機会を損失したり、賞味・消費期限が切れて廃棄処分したりといった在庫ロスが発生しにくいようになっています。
コストメリット⑤:顧客との信頼関係アップに繋がる
クロスドッキングのコストメリット5つ目が、「信頼関係の向上」です。
顧客との信頼関係を構築するには、さまざまな見えないコストが発生しています。仮に何らかの理由で顧客を逃してしまったとすると、逃した利益を再び獲得するために営業をかけていく必要があり、人や時間といったあらゆるリソースを割かなくてはなりません。
例えば、物流倉庫や物流センターで発生する棚卸差異も、顧客からの信頼を失う原因の一つだと言えるでしょう。
棚卸差異とは帳簿上の数量と在庫の数が合わないことを指し、倉庫内の在庫数よりも多い数量を受注してしまうリスクを伴います。この場合、顧客に商品をキャンセルをしてもらったり、新たに商品を調達する時間をもらう必要があるのですが、このようなアクシデントが度々発生してしまうと、信頼関係の悪化に繋がっていきます。
その点、クロスドッキングは必要な数量のみ入荷し、スピード感を持って流通させることが可能ですので、このようなアクシデントは起こりにくくなっています。
また、EC市場の拡大に伴って、昨今の物流現場では「より速く、より正確に」という風潮があります。クロスドッキングが持つスピード感は、顧客の信頼をキープするのに大きなメリットがあると言えるでしょう。
クロスドッキングのコストデメリット
次に、クロスドッキングの導入に際して知っておきたいコストデメリットを2つ解説していきます。
【クロスドッキングのコストデメリット】
①:ボリュームディスカウントが適応されにくい
②:無駄なコストが発生するリスクがある
コストデメリット①:ボリュームディスカウントが適応されにくい
クロスドッキングは、ボリュームディスカウントが適応されにくいというコストデメリットがあります。
保管機能を持たないクロスドッキングは、一度に大量購入ができませんので、小ロットでの仕入れが基本です。そのため、保管機能を持つ物流倉庫や物流センターと比べると、価格交渉においてはデメリットに働くことがあります。
このような理由から、クロスドッキングは大量仕入れによる薄利多売には不向きと言えますが、少ない納品数で厚い利益を得る厚利少売とは相性が良いと言えるでしょう。
コストデメリット②:無駄なコストが発生するリスクがある
工程の数が少なく、スピーディーに流れていくクロスドッキングでは、高度な情報管理能力が求められます。
保管機能を持つ物流倉庫や物流センターでは、商品を棚に入れたあと、一旦落ち着いて情報を整理することができますが、一方、クロスドッキングでは商品を棚に入れませんので、落ち着いて情報を整理するタイミングがありません。
例えば、トラックが渋滞や事故に巻き込まれて入荷が多少遅れたとしても、保管機能がある倉庫であれば、一度保管してから出荷日時を調整することができますが、クロスドッキングだと仮置きするスペースしかありませんので早急に情報を整理して日時調整する必要があります。
また、商品の現在地とシステム上の情報が一致していればまだ調整がしやすいものの、情報がリアル反映されなかったり、システム障害が発生していれば、アクシデントに対応するスタッフや保管スペースを確保するなど、無駄なコストがかかってしまいます。
さらに、システムを使いこなして、現場を円滑に指揮する能力を持った人材も必要でしょう。
そのため、信頼できる物流システムの導入と、高いスキルを持った人材の採用・育成が成功の鍵となります。
クロスドッキングで物流にスピード感を
今回は、物流の拠点機能であるクロスドッキングについてご紹介しました。
クロスドッキングは、リードタイムの短縮やコスト削減に貢献する一方で、正確な物流システムと高いスキルを持った人材を必要とする物流モデルです。
導入時は、システムや設備、人材採用・育成に初期投資がかかるものの、動き始めるとメリットが多い仕組みだと言えるでしょう。
なお、自社で物流倉庫や物流機能を持とうか検討されている方は、物流アウトソーシングがおすすめです。物流アウトソーシングは、自社で物流機能を持たずに、必要な時・必要な分だけ物流サービスを利用することができますので、倉庫やドライバーを自社で準備する必要がありません。
物流アウトソーシングについては「物流アウトソーシングとは?メリット・デメリット・業者の選び方を解説」で詳しくご紹介しています。そちらも併せてご覧ください。
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